健康への道しるべ

内容の補足 (より深い理解のために)

2-1 高血圧

5 研究(3) [1]

 2015年 米国から発表された SPRINT研究 という 102施設の共同研究です。対象者は、50歳以上で、収縮期血圧 ≧130 の高血圧で、約90%の人が降圧剤服用中の方でした。そして、血管系疾患のハイリスクとされる以下の項目のどれかに該当する人たちです。

・慢性腎臓病 (eGFR(*1) が 20-59)

・心血管系疾患の既往がある (ただし、脳卒中を除く)

・末梢動脈の検査で ABI≦0.90 (= 下肢の動脈に狭窄が疑われる)

・フラミンガムリスクスコア(*2) で、10年以内に冠動脈疾患に罹患する確率が ≧15% と予測される

・年齢が 75歳以上

なお、脳卒中の経験者・糖尿病の人は除外されます。
 このように選ばれた参加者 9,361人はくじで、標準治療群と強化治療群に分かれ、各々収縮期血圧を <140, <120 になるように治療します。結果として、経過観察中の血圧の平均値は、収縮期血圧で各々 134.6 , 121.5 でした。
約3年3ヵ月後に、結果に大きな差が出てしまい、これ以上研究を続けるのは倫理的によくないとして中止されています。強化治療群の方が良かったのです。研究の終了時点での結果は、標準治療群のリスクを1とすると、強化治療群のリスクは、心不全が 0.62、脳心血管病による死亡が 0.57、全死亡が 0.73 でした。75歳以上でも同様の結果でした。
薬の副作用は、強化治療群に多く見られ、急性の腎障害が多かったとされていますが、発表された時点では、永続的なものは見られていないとのことです。

*1 eGFR

簡単な血液検査で腎機能をみるもので、日常行われている検診でも大抵検査をされています。eGFR 50台 というのは、よくある程度の異常です。

*2 フラミンガム リスクスコア

今後 10年間に冠動脈疾患(心筋梗塞など)に罹患する可能性を推測する方法。年齢・性別・喫煙の有無・血圧・糖尿病の有無・コレステロール値をもとに計算します。


参考文献
[1] The SPRINT Research Group

A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control
NEJM 373(22) Nov 26, 2015; 2103-2116