健康への道しるべ

内容の補足 (より深い理解のために)

2-1 高血圧

4 研究(2) [1]

 10のコホート研究(※1)を集めたプール解析(※2)で、参加者は40-89歳の 67,309人。虚血性心疾患の人は含まれていませんが、降圧剤は服用している人とそうでない人がいます。
平均 10.2年間の観察期間中に、1,944人(2.9%) の脳心血管系による死亡が見られています。
血圧の区分をきっちりとしておきまます

① <120/80
② 120-129/80-84
③ 130-199/85-89
④ 140-159/90-99
⑤ 160-179/100-109
⑥ ≧180/≧110

各々の区分の条件は、①②については、収縮期血圧と拡張期血圧が "and" で結ばれ、③~⑥では "or" で結ばれるという定義です。例えば、①では「収縮期血圧が120未満」 and 「拡張期血圧が 80未満」 という意味です

追跡開始3年以内の死亡を除外した集計を見てみると、いずれの年令層も、①正常血圧の人に比べ、②正常高値血圧の人、③高値血圧の人、Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度高血圧(④, ⑤, ⑥) の人の脳心血管系疾患での死亡率は上昇しています。

上記のリスク比は、3年以内の死亡を除外したものですが、論文では除外しない場合の数値も示されていて、それでは、75-89歳の正常高値血圧の人のリスク比が 0.83倍(有意差なし) となっています。つまり血圧区分 ② の人が最もリスクが低そうだということになります。
 観察初期の数年間の死亡を除外するというのは、観察初期に既に「何らかの重症疾患を持っていて、その為に血圧も低く、早くに死亡する」という人を統計に加えないということであり、一般的にはこちらの方がより正確だと思います。そうすると、最もリスクの低い血圧区分は ① ということになります。
※1コホート研究

コホートとは集団の意味。例えば、ある町の住民検診を受けた人の中で、「医学研究に参加してもよい」と考えている人の集団。その人たちを5年、10年・・・ と追跡調査をする、というような研究。

※2 プール解析

メタ解析と呼ばれるまとめ研究は、通常は、多くの論文をまとめたものですが、結果だけをまとめたものです。
それに対して、プール解析と呼ばれるものは、個々人のデータ(年齢・血圧・生活習慣など)を各研究者が持ち寄って統合したものなので、すっきりした統計・解析をすることができます。


参考文献
[1] Fujiyoshi A

Blood pressure categories and long-term risk of cardiovascular disease according to age group in Japanese men and wemen
Hypertens Res 2012;35:947-53