健康への道しるべ

内容の補足 (より深い理解のために)

2-1 高血圧

2 米国の2つのガイドライン

 以下の2つのガイドラインのうち、(1) は日本高血圧学会よりも厳しい基準で、(2) は緩い基準です。
(1) ACC/AHA(米国心臓病学会/米国心臓協会 等11団体) (2017年) [1]

簡略化のために収縮期血圧の基準値のみ示します。
≧130 または ≧140 が降圧剤による治療対象となります。
130以上とするか、140以上とするかは、年齢・性・コレステロール値・喫煙・糖尿病などで決まりますが、70歳以上の場合は、ほぼ厳しい方の 130以上で降圧剤ということになっています。

(2) ACP/AAFP (米国内科学会/米国家庭医学会) (2017年) [2]

このガイドラインは、60歳以上の人を対象にしたもので、治療開始の基準、目標血圧ともに、収縮期血圧のみです。
≧150 が続く場合は、生活改善または降圧剤により <150 を目標に
心血管系のリスクの高い人は ≧140 なら、降圧剤により <140 を目標に
  (心血管系疾患のリスクが高いかどうかは個別の判断で)

★米国の2つのガイドラインの差は何なのか ? ?

上記の両ガイドラインの末尾に記された「土台となる論文」に、参考にした論文が掲載されています。その約半分は重複し、残りの約半分は重複していません。これが差をつくる一因かも知れませんが、もう1点。前者(ACC/AHA)と比べて、後者(ACP/AAFP)の方が、失神などの血圧低下による副作用を重視し、医療費をも勘案しているようです。

★日米3つのガイドラインの比較

ごく大まかに比較してみます。

高リスク・低リスクと言っても、その基準はガイドラインごとに異なっていますので、あくまでも「ごくおおまかに」です。
簡略化のために、収縮期血圧のみの記載とします。
表中、「低リスク」とは低リスクの人、「高リスク」とは高リスクの人。

 この表では、降圧剤開始の基準 が、ACC/AHA と日本高血圧学会で、全く同じようになっていますが、高リスク・低リスクの定義が両者で随分異なっていますので、それを勘案すると、日本高血圧学会の方が、ACC/AHA に比べて、降圧剤開始の基準が緩い基準になっています。
目標血圧も、「※」印のように、ACC/AHA と比べて緩いです。
また、ACF/AAFP は、他の二者よりも、随分緩い基準になっています。


参考文献
[1] Whelton PK

2017 ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults
Hypertension. 2018;71:e13-e115

[2] Qaseem A

Pharmacologic Treatment of Hypertension in Adults Aged 60 Yearsor Older to Higher Versus Lower Blood Pressure Targets: A ClinicalPractice Guideline From the American College of Physicians and theAmerican Academy of Family Physicians
Ann Intern Med. 2017;166:430-437